この記事でわかること
- 都市の外気はきれいになっても、日変動・季節変動は依然として大きい
- ビル管理法の空気清浄度は、外気よりも室内発生源の影響が大きい
- 中性能フィルターは「設備保全」の観点でも重要
- 喫煙がなくなっても、中性能フィルターの必要性は大きく変わらない
- 省エネ面では圧損増加に注意が必要
- 実務的な結論:中性能フィルターは「まだ必要」
ビル管理法の対象となる建物では、居室の空気環境を一定の基準内に保つため、空調設備に中性能フィルターが使用されることがあります。
一方で近年は、「都市部の外気は昔よりきれいになった」「室内喫煙が減ったため、以前ほど高い捕集性能は必要ないのではないか」という考え方もあります。
たしかに、外気中の粒子状物質や室内のたばこ煙については、以前と比べて条件が変化しています。しかし、空調設備のフィルターは、外気の汚れだけを処理する部品ではありません。室内で発生する粉じん、清掃時のほこり、人の出入りによる粒子の持ち込み、さらにコイルやダクトの汚れ防止など、運用面・保全面で大きな役割を持っています。
本稿では、中性能フィルターの必要性を、ビル管理法の空気清浄度、室内発生源、設備保全、省エネの観点から整理します。

1. 都市の外気はきれいになっても、日変動・季節変動は依然として大きい
環境省などの測定データを見ると、長期的には都市部の大気中粒子状物質は改善傾向にあります。これは、工場排出、車両排ガス、燃焼設備などへの規制や対策が進んだ結果と考えられます。
空調設備は、こうした外気を取り込みながら室内へ供給します。そのため、平均値だけを見て「外気がきれいになったからフィルターを簡略化できる」と判断するのは慎重であるべきです。
特に粗じんフィルターのみでは、比較的大きなほこりは捕集できても、PM2.5やPM10のような微小粒子を十分に抑えられない場合があります。中性能フィルターは、外気条件の一時的な悪化に対する緩衝材としても機能します。
2. ビル管理法の空気清浄度は、外気よりも室内発生源の影響が大きい
ビル管理法では、居室の空気環境について、浮遊粉じん量を0.15mg/m³以下に保つことが求められます。
この基準を考えるうえで重要なのは、室内の粉じんは外気だけで決まるものではないという点です。書類や段ボール、紙粉、衣類から出る繊維、人の移動、清掃作業、OA機器周辺のほこりなど、室内側にも多くの発生源があります。
中性能フィルターは、外気から入る粒子だけでなく、空調機を循環する空気中の粉じんを抑える役割もあります。したがって、ビル管理法の空気清浄度を安定して満たすためには、室内発生源まで含めた判断が必要です。

3. 中性能フィルターは「設備保全」の観点でも重要
中性能フィルターを外す、または性能を下げると、空気清浄度だけでなく、空調設備そのものにも影響が出る可能性があります。
フィルターで捕集されなかった粉じんは、熱交換器のコイル、ドレンパン、ダクト、吹出口などに付着します。コイル表面に汚れがたまると熱交換効率が低下し、同じ温湿度を維持するために送風機や冷温水設備への負荷が増えることがあります。
また、汚れが蓄積すると、清掃頻度の増加、コイル洗浄費用の増加、カビや臭気の発生リスク、ファンやダクト内部の汚れといった保守上の問題につながります。
フィルターの圧力損失だけを見ると、省エネのためにフィルターを簡略化したくなる場合があります。しかし、コイル汚れによる熱交換効率の低下の方が、結果的にエネルギーロスや保守費用を大きくすることもあります。
つまり中性能フィルターは、空気をきれいにするためだけでなく、空調設備を長く安定して使うための保護部品でもあります。
4. 喫煙がなくなっても、中性能フィルターの必要性は大きく変わらない
喫煙由来の粒子が減ったとしても、PM2.5、紙粉、繊維、人由来の微粒子、外気由来の季節変動などは依然として存在します。
また、喫煙対策は主に室内の発生源を一つ減らしたにすぎません。ビル管理法で求められる空気清浄度を安定して維持するには、ほかの発生源や外気条件も含めて管理する必要があります。
そのため、「喫煙がなくなったから中性能フィルターは不要」と単純に判断するのは適切ではありません。むしろ、空調設備の運用条件や室内用途を確認したうえで、必要な捕集性能を選定することが重要です。
5. 省エネ面では圧損増加に注意が必要
中性能フィルターには多くのメリットがありますが、省エネ面では圧力損失に注意が必要です。
一般的に、中性能フィルターは粗じんフィルターよりも捕集性能が高い一方で、初期圧力損失や終期圧力損失が大きくなります。たとえば、初期圧損が50〜80Pa程度、終期圧損が150〜200Pa程度となる仕様もあります。
圧力損失が大きくなると、送風機の負荷が増え、消費電力に影響する場合があります。さらに、フィルター交換時期を過ぎても使用を続けると、目詰まりによって圧損が上がり、風量不足や空調能力の低下につながることもあります。
6. 実務的な結論:中性能フィルターは「まだ必要」
設備保全コストを抑えることを考えると、中性能フィルターは現在でも合理的な選択肢です。しかし、過剰な性能のフィルターを採用すれば、圧力損失や交換費用が増え、省エネ面で不利になることもあります。そのため、重要なのは「外気がきれいかどうか」だけで判断するのではなく、建物用途、室内発生源、必要清浄度、保守体制、送風機能力を総合的に見て選定することです。
中性能フィルターは、空気環境と設備保全の両面を支える部品です。空調設備の計画や既設更新では、フィルター単体の価格や圧損だけでなく、設備全体の安定運用にどう関わるかを踏まえて検討することが求められます。
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