ニッシン工業便り第74号

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空調機の中で、空気が最初に出会う部品がエアフィルターです。目立たない部品ですが、フィルターの選び方や交換のタイミングひとつで、室内の空気の質も、空調機の寿命も、電気代も変わります。この記事では、産業用空調機器をつくるメーカーの立場から、空調機に使われるフィルターの種類と仕組み、性能の見方、長持ちさせる工夫までを、身近なたとえを交えながらやさしく解説します。前号でご紹介したエアハンドリングユニット(AHU)の全体構成から、今回は入口の「フィルター」に焦点を当てます。

1. 空調機のフィルターとは ― 機内を守る「マスク」

空気の中には、目に見えないホコリや花粉、さまざまな微粒子がたくさん漂っています。空調機のフィルターは、それらを捕まえて、室内の人や製品、そして空調機そのものを守る「空気のふるい」です。

フィルターは、建物内の空気をきれいに保つと同時に、空調機の内部(機内)をホコリから守る、いわば空調機にとってのマスクです。そして、マスクにも目的に応じて種類があるように、フィルターも「何を、どこまで取りたいか(清浄度)」によって種類が決まります。

2. フィルターがないと何が起きる?

フィルターが守っているものは、大きく3つあります。

  • 人の健康:ホコリや花粉などを室内に持ち込まないこと。
  • 空調機の性能:コイル(熱交換器)のすき間にホコリが詰まるのを防ぐこと。
  • 製品の品質:精密機器の工場やクリーンルームで、微粒子による不良を防ぐこと。

フィルターが十分に働かないと、ホコリはそのまま空調機の奥へ進みます。コイルが目詰まりして風量や冷暖房の効率が落ち、ダクトの中が汚れて衛生面にも影響が出ます。精密な製品をつくる工場では、製品不良の原因にもなりかねません。

フィルターがない場合は人や空調機がホコリで汚れ、フィルターを通した場合はきれいな空気で人も機器も清潔に保たれることを比べた図

3. フィルターの基本構造 ― ろ材で受けてためる

フィルターの中身は、不織布やガラス繊維などを重ねた「ろ材」です。空気はろ材の繊維のすき間を通り抜け、ホコリだけが繊維に引っかかってためられていきます。繊維が細かいほど、小さな粒子まで止められます。

ろ材は平らに張るのではなく、ひだ状に折りたたんだり、袋状にしたりして面積を大きくするのが一般的です。面積が広いほど空気の風速が遅くなり、ホコリをためられる量も増えて長持ちします。

身近なもので言えば、掃除機の紙パックや網戸と同じです。網の目が細かいほど小さなゴミも止まりますが、その分すぐに詰まります。そして、ためられる量には限りがあるため、いずれは交換が必要になります。これが、後でお話しする「交換時期」の考え方につながります。

掃除機の紙パックと網戸がホコリを受け止めてためる様子。フィルターのろ材が空気を通しながらホコリだけを捕まえる仕組みのたとえ

4. フィルターの3つのレベル ― プレ・中性能・HEPA

空調機のフィルターは、取る粒子の細かさによって大きく3つのレベルに分けられます。細かい粒子を取れるものほど高性能ですが、そのぶん空気の通りにくさ(抵抗)も大きくなります。

プレフィルター(粗じん用)は、綿ぼこりや大きなホコリを取る「入口の砦」です。洗って繰り返し使えるものも多く、安価で交換も簡単です。後ろに置いた高性能なフィルターを守る「前置き」の役割も担います。玄関マットや網戸が、大きな土や落ち葉、虫を最初に止めてくれるのと同じです。

中性能フィルターは、数µm(マイクロメートル)程度の粒子や花粉を取る、一般的なビル空調の主力です。袋状やひだ折りで面積を大きくした形が多く、日常使いの不織布マスクにあたります。中性能フィルターの必要性については、第69号「中性能フィルターの必要性と設備保全」でも詳しくご紹介しています。

HEPA(ヘパ)フィルター(高性能)は、JIS規格で「粒径0.3µmの粒子を99.97%以上捕集し、初期の圧力損失が245Pa以下」と定められた高性能フィルターです。クリーンルームや病院、精密工場などで使われます。さらに上には、0.15µmの粒子を99.9995%以上捕集するULPA(ウルパ)フィルターもあります。ごく細かな粒子まで逃さない代わりに、抵抗が大きく、価格も高くなります。

性能の測り方もレベルによって異なり、一般に粗じん用は捕まえたホコリの重さで評価する「質量法」、中性能は汚れの濃さで評価する「比色法」、HEPAやULPAは粒子の個数を数える「計数法」で評価されます。

目の粗いザルは大きな豆だけを止め、目の細かいザルは砂まで止める様子。フィルターの捕集効率と粒子の大きさの関係のたとえ

5. 性能を読む3つのものさし ― 捕集効率・面風速・圧力損失

フィルターの性能を読むときに押さえておきたいのが、次の3つのものさしです。

捕集効率は、通過する粒子のうち、どれだけを捕まえられるかの割合です。大きな粒子は楽に捕まえられ、小さくなるほど難しくなります。ザルの目と同じで、粗い網は大きな豆しか止められませんが、細かい網なら砂まで止まります。ただし、そのぶん詰まりやすくなります。

面風速は、フィルターの面を空気が通り抜ける速さで、「風量 ÷ フィルターの面積」で求められます。面風速が速すぎると、捕集効率が下がり、ためたホコリが吹き抜け、寿命も短くなります。同じ風量でも、ひだ折りなどでフィルターの面積を広げれば面風速は下がり、よく捕まえて長持ちするようになります。

圧力損失(圧損)は、フィルターを空気が通るときの「通りにくさ」です。新品できれいな状態の値を「初期圧損」と呼び、ホコリがたまるにつれて少しずつ上がっていきます。交換の目安となる上限の値が「最終圧損」です。圧力損失が上がるほど、送風機は余計な力を使って空気を押し出さなければならず、電気代が増えたり、風量が足りなくなったりします。詰まったストローで飲み物を吸うのが大変なのと同じで、詰まったフィルターは送風機に大きな負担をかけるのです。

詰まったストローと、ホコリで目詰まりしたフィルターに風を送る扇風機。フィルターの圧力損失が上がると送風機に負担がかかることのたとえ

6. 長持ちさせる工夫 ― 段階ろ過と差圧管理

フィルターを上手に使うコツのひとつが段階ろ過です。プレフィルター → 中性能フィルター → HEPAフィルターの順に、だんだん細かい粒子を取るように並べます。入口で大きなゴミを取っておけば、奥にある高価なフィルターが汚れにくくなり、長持ちします。手前のフィルターほど安価で交換も楽なので、全体のコストを抑えることにもつながります。

もうひとつが差圧管理です。フィルターの前後の圧力の差(差圧)を差圧計で見ていると、ホコリがたまるにつれて差圧が上がっていくのがわかります。この差圧が最終圧損に達したら交換、というのが基本の考え方です。掃除機の「紙パック満タンランプ」のように、差圧計はゴミのたまり具合を教えてくれるメーターです。あわせて、定期点検でフィルターの汚れや破れ、取り付けの状態を目で確認することも大切です。

ゴミで満杯になった掃除機の満タンランプと、目詰まりしたフィルター、針が上がった差圧計。差圧計でフィルターの交換時期を判断することのたとえ


7. ニッシン工業の空調機・改修工事

当社は産業用空調機器の専門メーカーとして、お客さまのご要望や設置条件をお聞きしながら、エアハンドリングユニットや熱交換器コイルを一台ずつ設計・製作しています。既存空調機のコイル交換や送風機の改修といった改修工事も手がけています。

「今の空調機のフィルターを見直したい」「フィルターの性能を上げたいが、送風機の能力が足りるか心配」など、お困りごとがありましたら、お気軽にお問い合わせください。専門スタッフが対応いたします。

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